人工内耳は手術によって耳の奥にある蝸牛(かぎ ゅう)に電極挿入し、直接聴神経を刺激して音を聞いています。 蝸牛内は大切な組織が多く存在するため、AB は電極挿入時の蝸牛損傷を抑えられる電極を開発しました。
蝸牛はカタツムリのような形状をしていますので、手術でこの渦巻き状の空間に電極を挿入します。 電極を挿入するときにストレートの電極は蝸牛の外壁に沿って進み、逆に蝸牛軸に巻き付くタイプの電極は蝸牛内壁に沿って進みます。AB はこの電極挿入時の蝸牛損傷をできるだけ抑えるために 外壁にも内壁にも接触しにくい電極配置になっており、最新の低侵襲手術にも対応しています。
蝸牛断面図
ミッドスカラ電極は、
1)鼓室階※1 に接触せず、それによって蝸牛の繊細な構造を保つこと
2)正円 窓※2からの挿入が可能なこと
3)低周波数の神経を刺激するために、より安定して頂回転側※3に 電極を留置できること を設計目標に開発されました。
※ 1 蝸牛内の空洞のひとつ
※ 2 蝸牛の入口(出口)
※ 3 蝸牛の奥の方で低音域を担当する部位
ミッドスカラ電極の挿入深度の標準偏差は20.7度で一般的な電極よりも安定していました。
ミッドスカラ電極は一般的な電極に比べ、蝸牛の大きさに関わらず一定した挿入深度を可能にしています。
左の図はStackovskyaら(2007年)とVerbistら(2010年)の検査方法で測定された電極挿入深度のグラフです。ミッドスカラ電極の平均挿入深度は420度(範囲:370度~480度)でした。
各電極挿入深度の標準偏差※4
ミッドスカラ電極:20.7度
ストレート電極:35.5度~171度
プリカーブ電極:34.5度~61度
※4ばらつきの大きさを表す指標。「平均-2標準偏差~平均+2標準偏差」に約95%が含まれます。
Adunka and Kiefer 2006, Fraysseら 2006, Jamesら2006, Radeloffら2008, Stoverら2005, Tykocinskiら2001, Wardropら2005